さて、サウナといえば必ずといっていいほど出てくるこのワード「ととのう」。昨今のサウナブームの盛り上がりはこの言葉があってこそのものだと思います。が、「ととのう」とは何でしょうか。他では味わうことができない独特の快感だといいます。「ととのった」とき身体のなかでは何が起きているのでしょうか。
言語化できない独特の快感
「ととのう」ためにサウナに通っているという方も少なくないのではないでしょうか。「ととのわなければ意味がない」と言う人までいます。
しかしこの「ととのう」とはどういった状態なのでしょうか。
「独特の浮遊感」や「身体の内と外が分離している」、「異次元に飛ばされる」など人によって表現の仕方はさまざまです。これまで味わったことのない感覚。言語化するのが難しい独特の快感なのだといいます。
この「ととのう」というワードの生みの親である「濡れ頭巾ちゃん」さんも、とある取材で「ととのった」状態について「人それぞれ定義ができないもの。気持ちいいのがどういう状態でどう感じるかは人それぞれ違う」と答えています。
鎮静と興奮が共存している状態
「ととのった」状態のとき、体内では何が起きているのでしょうか。 医師の加藤容崇氏は著書『医者が教えるサウナの教科書』で、興奮状態とリラックス状態の共存だと解説しています。
まず初めに、サウナは暖かいので副交感神経が優位になります(リラックス状態)。しばらくサウナに入っていると熱くなり、交感神経が活発化することで興奮状態となり、体内でアドレナリンやノルアドレナリンが分泌されます。
水風呂も同様に自律神経を刺激することで交感神経優位となりアドレナリンやノルアドレナリンの分泌を促進します。
アドレナリンは心拍数や血圧を上昇させます。またアドレナリンには覚醒作用があり、集中力や注意力が高まります。
ノルアドレナリンは、主に脳内や自律神経の神経伝達物質として機能します。こちらも集中力を高める効果がありますが、アドレナリンとの違いは精神的作用の有無です。アドレナリンは脳内ではほとんど分泌されないため精神的な作用には関与しません。
このとき人は極限の緊張(興奮)状態にあります。ここで外気浴に入ることで緊張が解けて副交感神経優位に切り替わる。一瞬でリラックス状態になるわけです。
ただこのとき体内には、まだアドレナリンがめぐっています。ここで副交感神経によるリラックスと、アドレナリンによる興奮が共存している状態になります。
リラックスしつつも脳は覚醒していて、身体はフワフワ気持ちよく、なのに頭はすっきりクリアという、日常生活にはない感覚となるのです。
「ととのい」すぎに注意
サウナで「ととのう」メカニズムはよく分かりましたね。
ただし注意点があります。
「ととのう」ことを意識するあまり、サウナ依存症になる危険性があることです。
サウナや水風呂は自立神経を刺激して交感神経を優位にしますが、人はストレスを感じた時にも交感神経が活発化します。
サウナの熱気や呼吸のしづらさは人体にとってストレスとなります。これに対して不快感を和らげる防衛反応として脳内では、エンドルフィンやドーパミンといった快楽物質が放出されます。
これはマラソンランナーがなる「ランナーズハイ」と同じ現象です。ちなみにサウナでは通常時よりも多い量のエンドルフィンが放出されるという研究結果もあります。
これらの快楽物質には中毒性があり、サウナで掛かったストレスを一気に解放させる「ととのう」という現象は、エンドルフィンやドーパミンを過剰に分泌させてしまい依存状態になってしまうこともあるようです。
サウナに行けなくてイライラする…と感じたら依存状態になっているかもしれません。
サウナは無理のない範囲で
サウナは急激な温度変化で強烈に自律神経を刺激します。心拍数や血圧の大幅な変化も伴いますので身体に大きな負担を与えているのです。
高血圧や心臓に持病のある方はくれぐれも注意して、無理のない範囲で「サ活」を楽しみましょう。